『政宗殿へ

 遂に冬が参りましたな。風邪などひいておられませぬか。
 寒さに関しては上田よりも奥州の方が何倍も厳しゅうございましょう。凍てつく夜などは、蝋燭の灯に雪深い彼方を思っております。
 そちらに温もりはございますか。

 今まで長々と文を綴り、その度にわがままを申して、真に申し訳のうござる。
 しかし、政宗殿とあのような穏やかなひと時を持てたこと、拙者この上なく嬉しゅうござる。
 お付き合い下さり、感謝の言葉もございませぬ。
 ですが最後にもう一つだけ、わがままを申してもよろしいか。


 拙者と雪見をして下され。


 政宗殿が育った土地の、真っ白な雪景色を見せて下され。
 このわがままな心を浄め祓うほどに白い、奥州の雪でござる。
 それさえ見られれば、最早わがままは言いませぬ。
 政宗殿の隣で、拙者に奥州の雪を見せて下され。

 政宗殿、拙者は幸せ者でございました。
 お館様という素晴らしきお方に仕えることができ、お館様のために槍を振るうことができました。
 戦場においても政宗殿という好敵手に相見え、情を分かつことさえ叶いました。
 佐助を始めとする、愛おしい者どもに出会うこともできました。
 拙者には過ぎた人生であったと思います。

 それなのに、最期になってまで拙者はわがままでしたな。
 ですが、政宗殿と数えた美しいことども、穏やかなひと時は、至上の宝物でございます。
 例えこの目で見ることが叶わなくとも。

 今まで、まことにありがとうございました。
 どうか拙者の最後のわがまま、お聞き届け下され。



 佐助には銀つばを頼んで下され。
 それから、今までの感謝を。拙者は佐助の菓子が一等好きであった、と』






 四通目 冬、雪見