『政宗殿へ そろそろ秋風の身に沁みる頃と存じますが、お元気ですか。 先日は見事な蛍を見せていただき、拙者感激しきりでござる。 蛍の光とは、何ゆえああも心を揺らすのでしょうな。 あのように美しいものを政宗殿と共に見れて、しみじみと幸せを感じまする。 佐助の水羊羹も美味でございましたしな。夏の冷菓子の美味さは、例えようもありませぬ。 奥州では、もう冬支度を始めているのでしょうか。 それとも豊穣を祝して、祭りの篝火を焚いているのでしょうか。 政宗殿の催す宴は大層賑わいそうですから、慶次殿も参られるやも知れませぬな。 金色の奥州が目に浮かぶようです。 上田の秋も美しゅうございますが、奥州の秋もそれはあでやかなことでございましょう。 上田では山に紅葉が燃え、里に彼岸花が燃えて、赤に染め抜かれまする。 銀杏を拾いに山に分け入った時など、見事なものでしたぞ。 紅葉の赤と公孫樹の金の綾錦、拙者、錦の打ち掛けにでも迷い込んだのかと思いました。 この季節は良うござるな。 晴天多く鍛練も気持ちが良い。米、芋、栗、食べ物も美味しゅうござるし、空気も金木犀の甘い芳香が香りまする。 いかがです、政宗殿。 紅葉狩を、いたしませぬか。 気持ちの良い空気を胸いっぱいに吸って、紅葉の狭間から空を見ましょう。 芋を焼くのも良い。魚も釣りましょうぞ。 秋山の一日は、それは楽しいものでござろう。 佐助には、弁当を頼んで下され。 おはぎと亥の子餅もお願いいたす』 三通目 秋、紅葉狩 |
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